読み終わって、いや、読んでいる途中で心が震えた。
トリックはほぼ推理したとおりだった。
東野さんの本はいくつか読んでいるし、ガリレオも予知夢も楽しく読ませていただいた。
傾向はわかっていたのだ。だから、最初は普通の面白い推理小説だと思った。
事実、360ページ前後に至るまでは、その通りだった。
だが、意味を考えて推理していなかった。
その推理が正しいとものと仮定して、それがなにに至るのかを考えていなかった。
楽しすぎて思考できなかったと言うのは、ただのいい訳だろう。
そして、それに関して、この本に対して敗北感を感じた。
殺人は悪である。
その仮定は私の中にはない。その点は、石神と同じ倫理を私も持っているのかもしれない。
が、
殺人が悪であるという前提は世の中では当然のことであって、私もそれは間違いではないと思っているので、その感覚から外れる事はない。
だから、彼のような犯罪はできない。
人であるから出来ないのである。
前述のページまで読んだ時、それまでの内容がただ推理小説家としての東野節を読んでいただけであって、本来の東野節であり、この本の本質まで読んだ物ではなかったと知った。
ただただ、感動の一冊。
2008/9/4 虎舟
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